補助金をもらった後にやること|実績報告・収益納付・財産処分の制限
義務は入金のあとも続く
補助金は、国や自治体のお金を特定の目的のために使うことを約束して受け取るものです。そのため、事業が終わって入金されたあとも、報告する義務、書類を残す義務、買ったものを勝手に処分しない義務が続きます。根拠になっているのは「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)と、各補助金の交付規程です。
ここでは、2026年9月時点のものづくり補助金(第23次締切)と小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉(第20回)の公募要領・交付規程を例に、採択後に負う主な義務を時間の順に並べます。
1. 実績報告と額の確定
事業(支払いを含む)が終わったら、実績報告書を出します。ものづくり補助金も持続化補助金も、事業が終わった日から30日を経過した日と、決められた提出期限のいずれか早い日までに出す決まりです。
事務局は報告書と証拠書類を審査し、必要に応じて現地で設備や帳簿を確かめたうえで、支払う補助金の額を確定します。現物や帳簿が確認できない経費は対象になりません。確定した額にもとづいて請求書を出し、入金されます。
実績報告に向けて、見積書・発注書・納品書・検収の記録・請求書・振込の記録を経費ごとにそろえておきます。
2. 事業化状況・事業効果の報告
入金後も、数年にわたって事業の成果を報告します。
- ものづくり補助金: 事業を終えた日が属する国の会計年度(4月〜3月)の終了後5年間、毎年度の終了後60日以内に「事業化状況・知的財産権等報告書」を出します。事業所内の最低賃金を確かめるため、賃金台帳の提出も求められます。報告しなかった場合や虚偽の報告には、補助金の返還を求めることがあるとされています。
- 持続化補助金: 事業終了から1年後の状況について「事業効果等状況報告」を出します。出していない事業者と、出してから1年が経っていない事業者は、次に申請するときに制限がかかります。
3. 賃上げなどの目標と返還
最近の補助金には、賃上げの目標を申請の要件にし、届かなかった場合に補助金の一部返還を求めるものがあります。ものづくり補助金では、給与支給総額の年平均成長率や事業所内最低賃金の目標が要件で、未達の程度に応じて返還額を計算する式が公募要領に載っています。付加価値額が増えておらず、かつ営業利益が赤字の場合(期間の数え方は要件ごとに決まっています)や、天災など事業者の責任でない理由がある場合は、返還を求めないという扱いもあります。
事業計画を立てるときの目標は、そのまま数年後に確かめられる約束になります。
4. 帳簿と証拠書類の5年保存
補助事業に関係する帳簿と証拠書類は、5年間保存します(起算点は、持続化補助金は事業が終わった日の属する年度の終了後、ものづくり補助金は交付年度の終了後)。この間に、事務局や会計検査院が抜き打ちで実地検査に入ることがあり、検査で返還を命じられれば従わなければなりません。紙でもデータでも、補助事業の分を他と分けて、すぐに出せる形で保管しておきます。
5. 財産処分の制限
補助金で買ったもののうち、単価50万円(税抜き)以上の機械・設備などは「処分制限財産」になります。持続化補助金では、50万円以上をかけて外注したウェブサイトや、店舗改装で価値が増えた不動産も対象になります。
- 処分制限期間は、税法上の耐用年数などをもとに定められます(ものづくり補助金の交付規程)。持続化補助金のウェブサイトは、通常は取得から5年間です。
- 期間中に、目的外の使用・売却・交換・貸付け・担保に入れる・廃棄をするときは、事前に事務局の承認を受けます。
- 承認を受けて処分する場合、残りの帳簿上の価値や売却額に応じて、補助金の全部または一部を納めることがあります。
- 承認を受けずに処分すると、交付決定の取消しと返還命令(加算金付き)の対象になります。
事業をやめる、移転する、会社を承継するといった場面でも、この制限はついてきます。ものづくり補助金の公募要領は、導入した設備に災害を補償する保険や共済を付けることを強く推奨しています。不注意で設備を焼失・紛失した場合も、善管注意義務違反として返還に至ることがあるためです。
6. 収益納付
収益納付は、補助事業で相当の収益が出た場合に、受け取った補助金の全部または一部を国に納める仕組みです。補助金適正化法は、交付の目的に反しない範囲でこの条件を付けることができると定めており、付けるかどうかは補助金ごとに決まります。
ものづくり補助金は、以前は収益納付の制度がありましたが、中小企業庁の案内によると第19次公募から収益納付を求めないことになりました。持続化補助金とものづくり補助金(第23次)の公募要領にも収益納付の定めは見当たりません。一方で、他の省庁や自治体の補助金には収益納付の条件が付いているものがあるので、交付規程で必ず確かめます。
採択前に義務を知っておく
ここに挙げた義務は、採択の通知と一緒に突然始まるのではなく、公募要領と交付規程に最初から書かれています。申請の前に「補助事業者の義務」の章を読み、報告の担当者と書類の保管場所を決めておくと、採択後に慌てずに済みます。
よくある質問
補助金で買った機械を売ったり、別の用途に使ったりできますか。
処分制限財産にあたる設備は、処分制限期間のうちは事前に事務局の承認を受けなければ、売却・転用・廃棄などができません。承認を受けて処分する場合も、残りの価値に応じて補助金の一部を納めることがあります。
事業化状況の報告を出し忘れるとどうなりますか。
ものづくり補助金の公募要領は、報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合に、補助金の返還を求めることがあるとしています。持続化補助金では、事業効果の報告を出していないと次の申請に制限がかかります。
収益納付はどの補助金にもありますか。
ありません。補助金適正化法は、補助事業で相当の収益が出た場合に補助金の全部または一部を納めさせる条件を付けることができるとしており、付けるかどうかは制度ごとに決まります。ものづくり補助金は第19次公募から収益納付を求めていません。
制度の内容は年度ごとに変わります。申請の前に、必ず最新の公募要領をご確認ください。記事の誤りに気づいた方は運営者情報の連絡先からお知らせください。